【レビュー】THE HOUSE OF THE DEAD 2 レビュー&感想

【レビュー】THE HOUSE OF THE DEAD 2 レビュー&感想

本ブログのレビュー記事、今回は『THE HOUSE OF THE DEAD 2』です。
SEGAの名作ガンシューティングゲームについて色々と。

概要

THE HOUSE OF THE DEAD 2(以下、HOD2)は、1998年にセガからリリースされたアーケード(ゲームセンター)用のガンシューティングゲーム。前作からわずか1年後にリリースされたシリーズ2作品目であり、当時ではセガ開発の最新基板であるNAOMIが使われていたため、グラフィックの細かさなども前作から進化しています。

アーケード版稼働開始の翌年1999年にはドリームキャストに移植され、家庭でもプレイ可能となりました。次いでPCソフト版Xbox版(HOD3に同時収録)も発売され、2008年にはWii版も発売された事で、ブラウン管以外のテレビでもプレイ可能となっています。
2019年にはForever Entertainmentという会社が初代HODとHOD2のリメイクを開発すると発表しており、初代リメイクはその後2022年4月に発売されました……が、2のリメイクは2023年1月現在になっても未だ音沙汰がありません。そろそろ続報出してほしい。

 

ストーリー

前作HODの物語は1998年12月、狂気に駆られた生物学者・キュリアン博士が作り出したゾンビ(厳密には動いている死体ではなく、見た目が人間に近い新生物)達を、研究所も兼ねている自身の邸宅に放ち、そこへ駆けつけた政府機関「AMS」のエージェント2人が逃げ遅れた研究員を助けながら館の奥を目指す……というものでした。

本作の物語の舞台はそれから約1年後の2000年2月、ヨーロッパ某国。
先の事件に関与していたと思われる人物の動向を追っていた前作主人公・Gとの連絡が途絶え、本作の主人公である2人のエージェント・ジェームズゲーリーがGのもとへ向かったところ、市街地でゾンビの群れに急襲される場面からスタートします。

 

HOD2

事態収拾のために同じく駆け付けたエージェントのエイミーハリーと協力しつつ、人々を襲うゾンビに応戦するジェームズ達。彼らは無事生きて帰ることができるのか?そしてこの事件の黒幕・ゴールドマンの目的とは……?

といった具合で、タイトルにも「2」とあるように前作の物語から続いている内容ではありますが、前作未プレイで内容を全く知らないという人でも問題ありません。前作をプレイしていれば少し楽しめる要素はあるものの、前作も本作も要は「襲ってくるゾンビを銃で撃ちながら黒幕のもとを目指す」という内容であって、ストーリー自体は簡潔です。続編の3以降は過去作の出来事に触れられる場面が目立つものの、本作に関してはそういった面も薄いため、いきなりHOD2から始めても大丈夫だろうと私自身は考えています。

 

評価したい点

先に本作の良い所を一言でまとめると「前作からの正当進化」です。
初代HODから元々あった独自性や面白さがそのまま受け継がれており、そこが前作からのプレイヤーからも好評なようでした。リリースから20年以上経った現在から見ると相対的にグラフィックやサウンドなどは粗いと感じてしまいますが、それでもガンシューティングゲームとしての完成度は高いと言えるでしょう。

本項では、その上で特に私が推したい部分をいくつか紹介します。

ゾンビ VS 銃 だからできること

HOD2

本シリーズの主な敵は、いわゆるゾンビ。ゾンビといえば体が腐敗していて脆い、話が通じず本能的にこちらを襲う危険な存在といった観念があるかと思います。だからこそためらわずに撃って倒そうという気にもなれますし、撃たれた腕や頭が吹き飛ぶという演出にも説得力が出てきます。血の色が明らかに人間のものとは違っていたとしても、それほど違和感がありません。

ところが前作のHODはゾンビの血が人間と同じ赤であり、頭を吹き飛ばされたゾンビの眼球が飛び出すような描写もあったことから、表現が過激すぎるといった批判がありました。ゲーマー各々が自宅のテレビで楽しむゲームと違い、老若男女様々な人が訪れるゲームセンターでは、その気が無くてもグロい場面が目についてしまう事があります。そのため日本国内では血の色が緑色に変更され、移植版でも血の色を赤に変更できなくするなどの措置が取られました。

 

HOD2 ジョニー

その後製作されたHOD2では、基本的に敵の血の色は緑、吹き飛んだ部位は生々しく描写されないといった具合に、前作と比べてマイルドに描かれるようになりました。撃たれた部分が欠損するというだけでも中々過激ではありますが、ゾンビを銃で倒す爽快感を損なわせないという判断は大いにアリだったと思います。

また、前作から引き継がれている要素でもありますが、この「部位を欠損させる」という点がゲームを攻略する上でのテクニックにも活きてきます。例えば斧を持った敵が目の前に迫り、こちらに斬りかかろうと腕を振り上げた際、その腕を撃って吹き飛ばせば攻撃が空振りとなってダメージを回避できます。これも身体が脆いゾンビ相手だからこそできる表現ですね。
これがもしゾンビではなく人間だったら、滅茶苦茶グロくてショッキングなゲームになってると思います……。

 

豊富なルート分岐

HOD2 4面救出イベント

住民の男性が穴に落ちそうになっているシーン。その男性の脚にはしがみついているゾンビが!

ここでゾンビを素早く倒せば男性は這い上がり、お礼を言って去っていきます。一方、倒すのが間に合わなかったり男性を誤射してしまった場合は下へと落ちていき、それを追いかけて主人公も穴から飛び降りるため、助けた時とは違うルートを進んでいく事になります。

 

HOD2 1面救出イベント

多くのガンシューが一定のルートを進んでいく形式を取っていた中、HODシリーズはこのように主人公の行動次第で進むルートが変化するのが特色でした。HODシリーズ以外にも進行ルートが変化するガンシューはいくつか存在していましたが、それらは「進みたい方向の矢印を撃つ」といったように、平たく言うとメタいルートの選び方でした。

対してHOD2の場合、先述の例の他にも「助けた住人から抜け道を教えてもらえる」「ボートに乗った人を助けられず、ボートが爆発炎上して道が塞がれる」「門の前に落ちているカギを撃つ(拾う)」といった具合にルートが変わる理由にも因果関係があるため、各々が短いシーンながらも自然なドラマ性が出ており、没入感を高めてくれます。前作HODにも同じ要素はありましたが、本作ではそこが更にブラッシュアップされています。

 

HOD2 2面分岐

こうした分岐システムがある事に加え、途中でゲームオーバーになった場合はステージ中でどんな進み方をしたかが分かるような演出も入ります。そのため「このステージにはこれだけ分岐点があるのか」「ここで何かすればルートが変わるんじゃないか」と好奇心を刺激され、繰り返しプレイしたくなる訳です。

プレイを突き詰めていけば、全ての住民を助けながら進めるルートなどに固定化されがちなので、それ以外のルートは結局スルーされがちです。しかしゲームセンター等でたまに他の人のプレイを見て、滅多に通らないようなルートに進んでいるのを見ると新しい発見があったりするので、分岐の多さは無駄ではないと私は考えています。この点は移植版のオリジナルモードでも活かされているのですが、そちらは後述します。

 

更に楽しさを追求できる移植版

HOD2 トレーニングモード

ここからはアーケード版には実装されていない、ドリームキャスト等の移植版に関しての評価点となります。

移植版のHOD2ではアーケード版と同じストーリーを進むモード以外に、本作をプレイする上で重要になる射撃テクニックを練習するためのトレーニングモードや、各ステージのボスにすぐ挑戦できるボスモードなどを遊ぶ事ができます。トレーニングモードは実際には本編の練習というよりオマケのミニゲームみたいなものですが、全て最高難度でクリアするとご褒美のアイテムが貰えるため、クリアする意義は一応あるといった感じ。

 

HOD2 街人の着ぐるみ

特筆すべきはオリジナルモード
内容は基本的にアーケードと同じく、チャプター1から順にステージを攻略していくというものですが、開始前にアイテムを2つまで持ち込むことができます。アイテムの効果はライフやコンティニューできる回数を増やすもの、銃の威力を上げるものといった攻略に役立つ物から、主人公の見た目を一般人のおじさんに変えるものステージ中に謎のUFOが出てくるようになるものといったユーモラスなアイテムまで様々です。

これらのアイテムは先述のトレーニングモードやボスモードのクリア報酬として手に入るほか、オリジナルモードをプレイしていく中で住民を助けたり、オブジェを撃って出現させる事でも入手できます。しかしレアなアイテムは普通にプレイするだけでは手に入らず、特定のルートに進まないとなかなか見つからない……なんて事も。そのため、普段とは違うルートに進んでアイテムを探し出すという楽しみ方もできるようになりました。
あまり選ばれないであろうルートをこうした形で注目させるようにしたのは上手いな、と思っています。

 

イマイチな点

私個人としては、本作は数あるガンシューティングゲームの中でも特に面白い作品だと思っています。が、万人にオススメできるかと言われると、そうとも言い切れません……。本作の評価したい点としてゾンビの腕などを撃って吹き飛ばせる爽快感を挙げましたが、そうした描写がダメだという人もいる訳ですし、やはり人を選ぶ内容である事には変わりありません。

本項ではHOD2において私が「ここはちょっとな……」と感じた部分を紹介していきます。あくまで主観が強めにはなっていますが、人によっては「そこが良いんじゃないか!!」と思うかもしれない点でもありますので、なにとぞご了承ください。

 

ボリューム増加に伴う高難度化と、回復チャンスの偏り

HOD2 ジェームズ

前作HODは全4ステージだったのに対し、本作HOD2は全6ステージ。1ステージあたりの長さは前作と比べて短めですが、当然強力なボスやイベントシーンの数は増えています。ゲーム開始からエンディングまで、イベントシーンをスキップせずに進めたとすると大体30分くらいかかる長さですね。

1回のプレイでそれだけボリュームのあるゲームを楽しめると考えればお得な感じはしますが、本作はプレイデータを保存するICカードなどが無い頃のアーケードゲーム。途中でしばらく休憩を挟んでから続きをプレイ、なんて事はできません。
そしてこのガンシュー、序盤から結構な連射力を要求されるゲームでもあるため、ずっとプレイし続けていると連射やリロード(ガンコントローラーを画面外に向けて行う)の動作でとにかく手が疲れます。やりすぎると痛くなってくるレベルです。

序盤は楽でも、中盤~終盤と進むにつれて強い敵が出てくるなど、ゲーム面で難しくなってきます。そこに手の疲れも重なると、思うように敵を処理できずにやられてしまう……。
何度もプレイを繰り返して、無駄に力を込め過ぎず敵を倒していけるようになればそんなケースは減りますが、そのレベルにたどり着くよりも前に「難しい!長すぎる!」と感じて離れてしまう人もいるかもしれません。

 

HOD2 パトリック

なお、ステージが進むにつれての難易度の上がり方はそれほど極端ではありません。後半になるにつれて一度に迫ってくる敵の数が多めになってきたり、頭を1発撃つだけでは倒せない敵が増えたりと、ごく自然な形で難しくなっていきます。

ただ不親切に感じたのが、ライフ(体力)を回復できる機会のバラつき方です。
ゲーム中でライフを回復する手段は「1・助けた住民から貰う」「2・ステージ中に隠れているライフを取る」「3・ステージクリア時にボーナスで貰う」の3通りですが、進んだルートによってはライフを全く拾えなかったり、酷いケースだとステージ中に登場した住人を全員助けてもボーナスライフを貰えないルートもあります。
加えてチャプター5では襲われてる住民が登場しないため、助けてライフを貰うといった場面もありませんし、ステージクリアしても住民がそもそも登場していないのでボーナスライフが入りません。
チャプター5は難所が多く(上の画像のシーンとか)、ボスも非常に強いのでノーダメージで突破するのは至難の業なのですが、それに対してライフ獲得のチャンスが少ないのはちょっと意地悪なんじゃないか、とも思いました。

余談ですが、ライフの回復機会に関しては続編以降で見直されています。上手くやれば1ステージを通してライフを3つ以上回復させる事もできるようになり、全体の難易度も易しめになっていきました。

 

救出イベントが色々な意味で「つらい」

HOD2 2面救出イベント

初代HODやHOD2には、ゾンビに襲われている人々が登場します。彼らはゾンビに対抗できる武器などを持っておらず、大抵はプレイヤーが襲っているゾンビを倒さない限り、敵の手にかかって死んでしまいます……。

襲われている人を助けるとライフを貰える事がありますし、ステージ中に一定数以上の救出に成功すれば、ステージクリア時にボーナスライフが入るというメリットがあります。また、救出成功でスコアにもボーナス点が入り、ゲーム開始から通ったルート上で救出可能な人を助けていれば、ラスボス戦の前にライフやスコアアイテムが大量に置かれたボーナス部屋に行けるというご褒美もあります。

反面、救出に失敗した場合はそれらのボーナスを失う事につながります。スコアは減点されてしまいますし、ステージによっては1人助け損ねただけでボーナスライフ無しに。加えて、襲われている人を誤射してしまった場合、撃ったプレイヤーのライフが1つマイナスされてしまうので非常に辛いです。このように色々な形でミスが響いてくるので、救出失敗によるペナルティは重いと言えるでしょう。

 

HOD2 アイドンワナダーイ

じゃあ全員助けながら進めばいいだけじゃん、と思う訳ですが、救出イベントは簡単なものばかりではありません。
序盤から複数のゾンビに襲われる人や、誤射してしまいかねないほどゾンビとの距離が近い(射線が被る)人も登場するため、無事に助け出すためにはそれなりの腕前が求められてきます。全員救出のハードルは間違いなく前作よりも高め。

ゲーム的には救出イベントを挟むことでプレイに緊張感を持たせたいという狙いもあるでしょうし、簡単すぎれば「救出イベント要る?」という意見も出てくるでしょう。私自身の考えとしては、罪もない人々がゾンビに襲われるという場面は、物語で起きている事件の凄惨さを表現する上でも欠かせない要素かな、と思っています。

しかしながら、助けられなかった人が悲鳴を上げて死ぬというのはプレイしていて辛いと感じる事もあります。映画などならまだしも、本作はプレイヤーが介入できるゲームであって「自分が下手なせいでこの人を死なせてしまった」と、初心者だった頃は度々凹んでたりもしていました……。

本作においては助けられずに死んでしまった家族や恋人のそばで生存者が泣き崩れるという場面もあったりで一層悲惨な印象が強くなっていますし、序盤のステージでは幼い子どもが襲われる場面もあるので、救出失敗や誤射した時の精神的なダメージも結構大きいです。
前作では要救助者が全員科学者であり、助けられずに死なせてしまったとしても主人公達の反応は薄めでした。これはこれで非情に感じてしまいそうですが、ゲームとしてのテンポを削がず、プレイヤーにミスを引き摺らせないという意味では前作のような雰囲気の方が良かったかもな、と思います。

 

一部英語ボイスの棒読みぶり

HOD2 ゴールドマン

(これに関しては正直アリな気もしますけれども……)

HODシリーズは英語音声で会話シーンが流れており、前作では声優さんの演技も好評だったようです。
が、HOD2はと言うと日本人でも違和感を覚えるほどの棒読みが目立ちます。それも要救助者などのモブキャラではなく、主人公ジェームズと黒幕ゴールドマンのセリフが大半。重要人物ゆえにセリフも多い訳ですから、棒読みの会話シーンを耳にする場面も当然増えてきて、凄惨な事件が描かれるストーリーに反してシュールな印象を抱いてしまいがちです。

ただ、私個人としては繰り返しプレイしているうちにジワジワと笑えてくるレベルに受け入れられましたし、ネット上でもこの棒読みぶりは問題視されるより笑える要素として見られがちです。海外の英語圏でもネタにされていたらしく、制作側の意図とは別に話題を呼ぶきっかけになっていました。4面ボス前のゴールドマンの笑い方はもはや伝説級。

キャラクターの声を演じた方々を想うと複雑ですが、これはこれで本作のひとつの「味」としてアリなのかもしれません。
ただキャラクターボイスの演じ方を気にする方もいるとは思いますので、ここでイマイチな点として挙げておきました。

 

感想&総評

HOD2 Special Agent

私が初めて本作をプレイしたのは中学生の頃で、その当時はHOD3がリリースされる少し前でした。
ガンシューが上手な友人がプレイしているのを側で見て以来、自分もこれくらい上手くできるようになりたいと感じたのがきっかけです。それ以前にもゲームセンターでガンシューを遊んだことはありましたが、深くやり込んだ作品はこのHOD2が初めてでした。

最初は友人と2人で、慣れてきたら1人でどこまで進めるか挑戦していき、コンティニューせずに最後までクリアできるほど上達したら今度はどこまで高いスコアを出せるか挑戦する……といった具合に、気が付けば結構長い期間、本作を遊ぶためにゲームセンターに通っていたのを覚えています。
もしこのHOD2が簡単に最後までクリアできるような難易度だったり、ルート分岐やマルチエンディングなど繰り返しプレイしたくなるような要素が薄ければ、本作はおろかガンシューティングというゲームジャンル自体にハマらなかったかもしれません。それくらい(私目線ではありますが)ガンシューとしての完成度が高いゲームだと思っています。

 

HOD2 ノーマルエンド

とはいえ、HOD2はシリーズ全タイトルの中でも一番難しいと言われているほどの難易度ですし、プレイしようにも2023年現在において現役で稼働しているゲームセンターはごく僅か、移植版も現行ハードではプレイできない状態です。とてももったいない。

ブラウン管テレビが廃れてからはドリームキャスト版なども遊びづらくなっており、かつてのゲームセンターと同じような感覚でプレイでするのは難しくなってしまいました。今だとWii版をプレイするのが最適かと思いますが、WiiはHDMI端子が無いため現行のモニターとの接続にコンバーターが必要になってきますし、ソフト(HOD2&3)も半ばプレミア化しているのか中古価格も高めで、気軽には手を出しづらいのが現状です。

そういった面から中々お薦めしづらいゲームではあるのですが、それでも触れる機会があるのならば触れてみて欲しい……というのが私の率直な願いでもあります。
取りあえずプレイ動画を観て判断したいという方は、私がYouTubeニコニコ動画で公開している字幕解説付きのプレイ動画を一度ご覧下さい。