【レビュー】ホーンテッドミュージアム レビュー&感想

【レビュー】ホーンテッドミュージアム レビュー&感想

レビュー記事第2弾は、タイトーのガンシュー『ホーンテッドミュージアム』について。
現時点では家庭用移植されていない、アーケードガンシューです。

概要

ホーンテッドミュージアムは、2009年7月にタイトーからリリースされたアーケード用ガンシューティングゲーム。同年に発足した「NO考ゲーム(後にノウコウゲームに改称)」シリーズのひとつであり、操作面・ストーリー面などにおいて単純明快なガンシューとなっています。

筐体はシアター型となっており、画面やプレイヤーがパーテーションで囲われている状態でのプレイとなるため、ゲーム画面に集中しやすくなっているのが特徴です。加えて音響効果も増しており、大きい敵が迫ってくる時や爆発が起きた時の音の迫力はなかなかのもの。
また、ガンシューでありながらリロードの操作(画面外に銃を向けるなど)が必要無く、とにかく撃つ事に集中できるため、初心者にも取っつきやすいガンシューと言えます。

リリースから2年後の2011年には続編・ホーンテッドミュージアムⅡもリリースされており、ガンシューティングゲームとしては人気のあるタイトルだったようです。しかし続編を含め、稼働から10年以上経った現在でも移植版は出ていません。

 

ストーリー

ホーンテッドミュージアム 導入部

とある博物館で、1週間のうちに複数の人物が行方不明になるという怪事件が発生。調査のためクリス・ワイルドアキラ・ナカタ2名の捜査官が現場の博物館に足を踏み入れた瞬間、2人は館内に閉じ込められてしまいます。
そこへ2人に襲い掛かる、数えきれないほどの模型や生物標本といった展示物。2人は無事この不気味な博物館から脱出できるのか?そして連続失踪事件の真相とは……?

といった具合に、導入部分はあっさりしています。割とシリアスに思えそうですが、ゲーム全体の雰囲気はコメディ寄りであり、タイトルに反して怖さや重苦しさを感じる場面はほとんどありません。むしろ唐突に異次元にワープしたりと超展開が多いほか、主人公2人の掛け合いやBGMなどでも良い意味で不気味な雰囲気を壊してくれるので、ホラー要素が苦手な人でも楽しみやすいでしょう。

 

ホーンテッドミュージアム 台座

ステージ構成は選択可能な前半ステージ3つ&後半ステージ3つと、それらすべてをクリアしてから始まる最終ステージの全7面。
1~6面はクリアすると謎の台座に対応した水晶が嵌め込まれていき、全て揃うと何かが起こる……という演出になっています。

ステージ1つクリアするごとに事件の手がかりが見つかる……といった事は無く、ネタバレにならない程度に説明するなら、最終ステージ~エンディングで失踪事件の真相が一気に説明される流れです。
その点で全体のストーリーは薄いものの、一応納得のできる真相ではありますし、ガンシュー部分をテンポ良く楽しめるようにするという意味ではこうした形を取るのもアリだろうと思っています。個人的に。

 

評価したい点

概要部分でも少し触れましたが、本作はタイトーが打ち出した『NO考ゲーム』シリーズのひとつであり、「NO考=難しい操作を覚える必要が無く、すぐ遊べる」「NO巧=腕前によらず誰でも遊べる」などの面を重視して作られています。
実際にプレイした私から見ても、すぐに理解しやすいストーリーや操作性などは初心者さんにも奨めやすくて良いな、という印象を持てました。

本項ではその点を踏まえつつ、オススメしたいポイントを紹介していきます。

 

サウンド面の豪華さ

タイトーのゲームと言えば、同社サウンドチームのZUNTATAが有名かと思います。
本作では効果音監修としてばびー氏こと石川勝久さん、BGMのコンポーザーとして土屋昇平さんが参加。ゲーム中のサウンド面を盛り上げており、内容のハチャメチャっぷりを良い具合に強調しています。

加えて本作の筐体はシアター型であり、言うなれば小さめの個室で楽しむタイプのガンシューなので、音響効果もバツグンです。
ゲームセンター内は複数のマシンが同時に稼働している訳で、言ってしまえばかなりうるさい場所なのですが、こういうタイプの筐体だとゲーム音声を聞き取りやすく、また画面や音にも集中できるので内容ひとつひとつが印象に残りやすいですね。

本作のサウンドトラックもiTunes Storeにて販売(ダウンロード販売のみ)されており、その曲数は24曲と結構なボリューム。販売ページで試聴もできるので、興味のある方は一度聴いてみるのもオススメです。(販売ページはこちら

 

主人公2人のキャラクター

ホーンテッドミュージアム

本作の主人公2人は連続失踪事件を調査する捜査官……なんですが、2人とも硬派・冷静な感じの人物ではありません。
それどころか興味のある展示物(女性主人公のクリスは人形、男性主人公のアキラは飛行機の模型など)を見つけると子どもっぽく喜ぶ一面もあり、「何だかんだで楽しんでない?」と思ってしまうようなところも。
他にも3Dメガネやパーティー帽子といったアクセサリーを拾う(撃つ)と何の説明も無しにそれを身に着けてたりもします。謎過ぎる。

シリアスな雰囲気が壊れるのでは……と思われそうですが、もともと本作は子どもでも楽しめるような内容として作られている印象もあるので、主人公達のテンションが妙に高かったとしても違和感はありませんでした。個人的にはむしろ好感を持てたくらいです。

ちなみにクリスの声は宮島依里さん、アキラの声は中谷一博さんが演じています。どちらもベテラン声優さんであり、本作でも勝気なクリスとビビりなアキラ、2人の魅力を引き立ててくれているので、キャラクターの印象が強く残りやすいですね。

 

イマイチな点

初心者に取っつきやすいゲーム性や、筐体の構造を活かした没入感は良かったものの、オールクリアを目指して遊ぶとなるとどうかな……と思ったのが正直な感想です。色々な意味で、長くは楽しめないだろうと思ってしまうような部分もありました。
以下、そう思った理由について解説していきます。

 

難易度の調整が極端すぎる

ホーンテッドミュージアム 航空機

本作が初心者向けに作られているという点は前述の通りで、最初に選べる3つのステージのうち、どれを選択しても敵の攻撃は控え目になっています……最初だけは。

2ステージ目以降は「初心者接待はここまでだ」と言わんばかりにいきなり難しくなり、敵の攻撃速度が明らかに速くなるため、初見のプレイヤーは困惑する事必至。ガンシュー慣れしている人なら経験でカバーできる部分もありますが、それでもノーコンティニュークリアのハードルは高めです(不可能ではないレベル)。

これは私自身の考えなのですが、ガンシューの面白さは「自分の腕前の上達を実感できるか」という部分で決まってくるかと思います。
どんなガンシューも始めたての時は、次第に難しくなっていくステージを1クレジットでどこまでクリアできるか挑戦するような気分で遊んでいますので、それをいきなりへし折られるような難しさだと「そういうゲームか」と冷めてしまう事もあります。

ステージを進めていくにつれて一度に襲ってくる敵の数が増える or 動きが複雑になっていくといった具合に段階的に難しくしていくか、ステージの選択制を活かして「ここは簡単」「ここは難しめ」といった感じにステージ毎の難易度を固定化させ、プレイヤーにもそれがあらかじめ分かるようにして攻略順を考えられるようにしておけば、もう少しやり込んでみたいという気になれたでしょう。
……まぁ、最初のステージからいきなり理不尽な難しさじゃないだけマシですけれども。

 

アイテム周りがちょっと不親切

ホーンテッドミュージアム 古代文明

ステージ中には拾う事で一定数トリガーを引きっぱなしでも連射可能になるフルオートや、体力を少し回復できるライフといったアイテムも多数設置されています。

アイテムは初めからステージ内に見える形で配置されているものと、アイテムボックスを撃つと出てくるものの2通りがありますが、後者は大半がスコアアイテム。攻略に活きてくるアイテムは遠かったり、暗闇の中でも見つけやすいので、そこは親切だと思います。
中には一瞬しか回収できるチャンスがないような配置のものもありますが、そこは特に意地悪だとも思いませんでした。他のガンシューでも割とある事ですしね。

そんなアイテムの配置を繰り返しプレイしながら覚えていき、効率良く回収できればノーコンティニューでも結構進んでいける……のですが、ここで地味に厄介なのが、ランダムで出現する
各ステージの前半(博物館内)を進んでいると突然目の前に鏡が現れ、ステージの左右を反転させる事があります。これによって敵やアイテムの配置も通常と反対になるので、アイテムの配置を覚えていても鏡の影響まで考慮しなければなりません。

単純に元の位置が左寄りだったら、鏡が出た時は右寄りになるという話ではありますが、大量の敵を捌きながらそこまで頭が回るかは別問題。
そもそもこの鏡、先述の通り出現するかどうかは完全にランダムなので、攻略をパターン化できないという意味では嫌らしい存在です。メーカー側からすれば、同じステージを繰り返しプレイしても飽きさせないようなギミックとして用意したんでしょうけれども……。

 

ホーンテッドミュージアム 航空機

もう1つ不親切に感じたのが、各ステージの後半(ボスエリア)に移行する際に保持していたフルオートの弾が全部消えるところ。
最終面以外のどのステージも後半は異空間にワープし、その異空間にあわせた銃(水中だったら水中銃、都市だとRPGといった感じ)で戦うという演出が入るのですが、それに伴ってフルオート状態が解消されてしまいます。

で、銃の特性が変わるからフルオートが解除されるのも当然か……と思いきや、その直後にまたフルオートのアイテムが出てくる訳です。RPGもフルオートで撃てるようになります。「こっちでもフルオート拾えるのなら弾持ち越しさせてくれても良くない?」と感じたの、きっと私だけではないでしょう……。

空間に合わせて武器チェンジ&フルオート解除の仕様のまま出すのなら、変更後の武器をもっと大げさなくらいユニークな性能にしてくれた方が楽しいんじゃないか……という気がしました。このステージボスはアイテムを拾わなくてもずっとフルオートで戦えるとか、宇宙空間なら拳銃よりも当たり判定が広いレーザー砲を撃ちまくれる、といった具合ですね。
メーカー側からすればその分武器ごとの仕様設定なども増えて大変になるかと思いますが、せっかく色んなジャンルの敵や世界観を詰め込んだようなガンシューな訳ですし、もう少し欲張っても(?)良かったんじゃないかと思います。

 

スコアやアクセサリーの要素がほぼ空気

ホーンテッドミュージアム ボーナスゲーム

本作にもスコアの要素は存在し、敵を倒したり金貨などのスコアアイテムを拾う事で得点が加算されていきます。

最後までクリアした時点でスコアが筐体内のランキングを更新したらネームエントリー可能……なのですが、スコアが活きてくるのはそこだけ。ステージ中でたくさんスコアを稼げていればライフが回復するとか、エンディングが変化するといった要素はありません。

ですがその割にはステージ中にスコアアイテムがたくさん出てきますし、前半・後半ステージの間にはボーナスステージ(全3種)まで用意されています。ボーナスステージはどちらかと言うと息抜きのミニゲーム的なもので失敗してもペナルティはありませんが、成功してスコアが増えても有難みは薄め。

別にスコアを稼いでいく事で攻略やストーリー上のメリットが無くても、ガンシューとして面白くできていればそこは問題無いと思います。他社のガンシューだとタイムクライシスシリーズやバーチャコップシリーズ等もそうですしね。

しかしそういったゲームはプレイヤーに「スコアを稼ぎながらクリアしている事が上手い・凄い」と実感させてくれる演出やシステムに秀でている訳であって、ホーンテッドミュージアムはその面が乏しいのが残念な所です。プレイ中にその時点でのスコアが表示されてますが、表示が小さすぎて見づらいのも良くないなぁ、と感じてしまいました。

 

ホーンテッドミュージアム クリス捜査官

もう1つ「これいる?」と思ったのがアクセサリーの要素。
ステージ中には全12種類のアクセサリーが隠されており、それらを撃つと拾った側のプレイヤーキャラがアクセサリーを身に着けるようになっています。あくまで一種のお遊び要素なため、これによるメリット(受けるダメージが減る等)はありません。

アクセサリーは頭にかぶるタイプ(カツラや帽子など)や、顔に装着するタイプ(3Dメガネや眼帯など)があり、例えば3Dメガネを拾った後に同じプレイヤーが眼帯を拾った場合、身に着けるアクセサリーは後から拾った方、つまり眼帯に変更されます。

キャラの見た目が変化していくのはシュールで面白いと思いますが、そもそもキャラクターの外見を確認できるシーンはごく僅かで、その大半がステージ選択画面(※この時のBGM名が”STRANGE CLOTHES”=変な服)やステージクリア時となっています。それ以外だとボーナスステージの1つ(落石)や最終面開始シーン、エンディングくらい。

ここはもう少し主人公2人が動き回るシーンがあればシュールさも増して面白かっただろうな……というのと、ステージ選択画面で拾ったアクセサリーの中から好きな物を選んで身に着けられたら良かったのにな、と思っています。

例えば「大蔵書庫」だとメガネ、フランケンマスク、3Dメガネの3つのアクセサリーが拾える訳ですが、全部顔に装着するタイプなので、全部集めても3Dメガネを身に着けた姿しか見る事ができません。他のアクセサリーを装着したい場合は敢えて3Dメガネをスルーする必要があります。

まぁ、コレは本当にお遊び要素なのでスルーしながら進めても全く問題無いのですが、ステージクリア時に表示される集めたアクセサリ一覧に抜けができて、それはそれでモヤッとしてしまうんですよね。

アクセサリーを拾ったり、全部揃える事でボーナス点も多めに入るためスコアアタックの上では何気に大事な要素だったりもする訳ですから、全部集めながら遊ぶ事を前提としたシステムにするか、それが難しいなら最初からアクセサリーの要素を入れない方が良いのでは?という気もしました。

 

感想&総評

ホーンテッドミュージアム グッドエンド

ガンシューは結構取っつきにくいジャンルだと思いますし、撃つ以外の操作を要求される事もあって初心者にはハードルが高いと思われがちでしたが、ホーンテッドミュージアムはそんな空気を取り払ってくれたと思っています。

シアター型だからプレイ中の姿が目立たない(目立つのが嫌で避けるという人、割といる模様)ですし、複雑な操作も必要ありません。友達同士でワイワイ楽しめるようなガンシューです。なので「ちょっと遊んでみる程度なら」、私からも本作はオススメです。ノーコンティニュークリアを目指すレベルまでやり込むとなると話は別ですけど。

やり込んでいくうちに奥深さが見つかったり、面白いと感じるようになるゲームは「スルメゲー」と表現されますが、本作はスルメというよりは「ガムゲー」に近い印象です。最初はとても楽しいんですけど、味が長続きしないというか……。

普通にクリアを目指すとそこそこの内容だとしても、スコアアタックを始めてみたらかなり奥深かった……みたいな意外性や手応えがあれば、もっと話題に上がって長く楽しめたかもしれません。一応続編のホーンテッドミュージアムⅡではスコアアタック要素が増しているので、開発側もここは気を遣って下さったんだと思います。

惜しい点はあるものの、何だかんだで時々気分転換に遊びたくなるようなガンシューなので私にとっては好きなガンシューです。しかし今となっては現役で稼働しているゲームセンターがあるのかすら怪しいですね……。

このゲーム、そのまま筐体をアップコンバートする事で続編のⅡを稼働できたため、Ⅱに換装せずに初代をそのまま稼働させているお店は殆ど見かけませんでした。家庭用移植もされていない作品なので、現在本作を遊びたくてもなかなかそれができない、というのが一番残念なところでもあります。何らかの形でまた遊べるようになって欲しいものです。

(おまけ:私がニコニコ動画に公開した本作のプレイ動画一覧